サキアの休日…39

 月明かりに照らされて…姿を見せたのは、竜でも、トカゲでも、

異形の子供でもなく…

まるで色素がないのではないか、というくらい、透き通る肌をした、

燃えるような紅い瞳の女の子だった。


「私たち…いっぺんに、魅了されたのよ。

 なんて、きれいな女の子だろう…って!

 今まで…そういう子たちは、いたみたいだけど、いつもどこかに

 隠されていて、私達の目に入ることは、なかったからねぇ」

 初めて『竜の申し子』であるキヨラさんに、会ったことを思い

出すと、懐かしそうにサキアは微笑む。

「私も、おんなじよ」

キヨラはそう言う。

「生まれた時から、ずーっと外の世界を知らなかったの。

 だから、同い年の子なんて…お遣いの人たちを通してしか、会う

 ことはなかったし、まさかあなたたちみたいに、禁を犯して、

 近付いて来る子たちなんて、今まで誰もいなかったから…

 一体何があったのか、わからなかったのよ」

うっすらと微笑む。

「まぁ、そうよねぇ」

思えば私たち、ムチャをしたのね…と、サキアは苦笑いを浮かべた。


「ミナトがなんで?」

 どうも、キヨラも気になるようだ。

「うん…竜のお姫様を見に行こう…って、言われたのよ」

その当時のサキアたちは、とにかく大人たちの裏をかくのが、

たのしかった。

だから…近付くな、と言われたら、逆に近付いてやろう…と、

天邪鬼な気持ちが芽生えた…といっても、過言ではないのだ。

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