第362話 トオへ向かえ!

 トオの壁沿いに沿って、一向は上って行く。

ゴツゴツとした岩肌や、ツルツルとした壁面や、

トロンとしたスライムのようなものが、渾然一体となって、

まるでアメーバのように、貼り付いている。

(一体、これは何なんだ?)

そう裕太は思うのだけれど、どうやらこのトオに乗り込む人の

思念や、欲望や、妬みなどを吸い取って、さまざまに変化している

ようなのだ。

その姿はまるで、話に聞いたバベルの塔のような…

途方もなく高い建物であり、見方によれば、火山の噴火口のようにも

見える。

 ヒョイヒョイとそれをすり抜け、迷うことなく、先頭のサキアさん

は上って行く。

(それにしても、まさか道案内まで、してくれるとはなぁ)

まったく予想外ではあったけれど…

ジュンペイやショーンが側にいない裕太にとっては、頼もしい援軍

ではあった。


 時折、窓のすき間から、中の様子がチラリと見て取れる。

海底のような部屋であったり、宇宙の無重力空間のようなものであったり、

ジャングルのようなものが、かすかに見えた。

そうして…

「あっ」

先頭を行くサキアさんの動きが、止まった。

「なに?」

切り立った崖のギリギリのきざはしで、鳥かごらしきものが、ぶら下がって

いるのが見える。

裕太の頭の中で、早くも警戒ランプが点滅を始めた…

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