第57話 不可能を可能に変えよ!ミッションに挑戦せよ!

「さて…どうやって、助け出そうか?」

 リーダーのミナトは、最年長のマリさんに意見を求める。

「あら」

歴戦の英雄…マリさんは、ニッコリと笑うと、彼を振り返る。

「なんだぁ~まだ、考えてなかったの?」

笑うとただのオバサンだ。

ホントにこの人、強いの?

ジュンペイは不思議に思う。

だが若きリーダーは、頭をかきつつ、まるで先生に怒られた小学生のような

顔をした。

「うん…みんなの意見が聞きたくて」

それでいいのか、と思うけれど、彼らはそんなことを微塵も気にせず。

ジュンペイの頭越しに話し始める。


「不意をつくっていうのは、どう?」

「うーん、あそこは警備が厳しいので有名なんだよね」

「トラップとか、赤外線監視装置とか」

「噂では、ゾンビ?

 トオから連れて来られたモンスターがいるとか?」

 ポンポンとジュンペイのことを、忘れたかのように、会話の応酬が

続いている。

「地下の通路…どの辺まで続いているのか、わかる?」

ミアがミナトに向かって聞いた。

「そうだなぁ~ハッキリとはわからないけど、トオの外までずっと

 続いているようだよ」

そう言うと…ミナトは手に持っている棒で、地面に線を引く。

「現在地はここ。

 たぶん裕太くんは、ここにいるから…」

丸で囲むのを見て、ジュンペイは何でこの人はわかるのだろう…

と不思議に思う。


 だってこんな、日も差さない地下…

どこを見ても、同じに見えるだろうし、方向感覚がおかしくなりそうだ。

するとマリという不思議なオバサンが、ふふふと笑い

「ここの人たちはね、身体で向きを感知しているのよ」と言う。

 ホントか?

 それって、動物?

「体のどこで?」

ジュンペイは声を上げた。

 まさかアンテナみたいなものが、身体に埋め込まれているのか?

 それとも…人造人間?

するとミナトは、ジュンペイの顔色を見ると

「おいおい!ボクたちは…マリさんのような特殊な能力は、ないよ!」

大げさな身振りで笑う。


「それには、ちゃんとタネがあるんだ」

彼はニヤリとして言う。

「実はね、壁に…特殊な塗料が塗ってあるんだ」

内緒話をするように、こそっとジュンペイに言う。

「えっ、そんなの…見つかったら、かえってマズイんじゃあないの?」

そんなにわかりやすいのなら…

簡単に見破られて、それだけじゃなく、

逆にアジトを、敵に教えてしまうのではないか?

「違うんだな!」

 チッチッチ、と彼は指を揺らすと、さらに得意気にすましてみせる。

「あれは、普通の懐中電灯では見えないんだ。

 それに、慣れた人でないと、単なるシミにしか見えないよ」

「そうそう!特殊なライトがないとね!」

彼らは顔を見合わせ、うなづいてみせる。

監視カメラといい、彼らは思ったよりもはるかに、優秀なのかもしれない。

そう思う反面

(なんだ、そりゃ!

 ドラえもんの道具か?)

思わず突っ込むジュンペイなのだった。

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