第58話 待ってて裕太!助けに行くぞ!

 ジュンペイはポカンとした。

「でもさぁ、どうやって…裕太を助けに行くの?」

 何をおいても、まずは裕太だ!

ジュンペイは、キュッと顔をしかめてみせた。

 すると先ほどまで、後ろの方にいたタケシが…ぬぅっと

でっかい身体を突き出すと

「この地下はね、迷路のようになっていいるんだ」

低い声で、ボソッと言う。

「迷路?」

「そう!」

 キョトンとするジュンペイのことを、ミアは目をクリクリさせて

見る。

「だからね、迷うと厄介なんだけれど…

 わざわざ地上に出なくても、目的の場所に繋がっているのよ」

得意そうに、そう言った。

「とすると…たぶん、行き先は、あそこだよな?」

大男のタケシが、リーダーであるミナトにそう言う。

「あぁ。十中八九、そこだろうな」

タケシはうん、とうなづくと

「なら、ぶっつぶしに行くだけだな!」

よっしゃ、きた!

嬉しそうに、物騒なことを言うと、ハヤトが不気味な笑みを

浮かべる。

タケシは「腕が鳴るなぁ」と両方のコブシをたたきつけると

「おい!無駄に、人を殺すなよ!

 子供の救出が、優先だ!」

即座に、ミナトがハヤトに横やりを出す。

血気盛んな彼は…つまらなさそうに、顔をそむけた。


「敵は手ごわいぞ!

 何しろ、あのドクターだ」

急に真剣な顔つきで、ミナトが言う。

「えっ、そんなにおっかないの?」

ジュンペイが、珍しく不安な顔になった。

「いいか?危険だと思ったら、すぐに隠れるんだぞ」

ものものしいいで立ちのミナトたちに囲まれて、ジュンペイはやや

顔をこわばらせ、地下の通路を歩き始める。

 裕太を拉致したのは、ドクターが雇っている、闇の無法者という

ことだった。

「要するに…アイツらは、ヤクザだ。

 表向きは、ガーディアンを名乗って、研究施設の周辺を島に

しているけどな!」

ハヤトが、不愛想な顔つきでそう言う。

もしかしたら、この地下の人たちと、何かイザコザがあるのかもしれない…

「そうなの?」

思わずジュンペイが聞く。

「ヤツらに目をつけられたら…

 地の果てまで、追いかけて来るからな!

 気を緩めるなよ!」

肩にでっかい武器をかついで、ブスッとした顔でジュンペイに言う。

(もしかしたら、この人…

 こういう顔なのかもしれないなぁ)

そんなに、悪い人じゃないかもしれない…と、ジュンペイはそう

感じていた。


「子供は嫌いだ。俺に近付くな」

 出発する時に、ハヤトに話しかけようとしたら、早速ひと言

言われた。

(え~っ、まだ、何もしてないのにぃ)

ちょっと不満に思うジュンペイだ。

それを見かねたのか、

「ジュンペイくん、こっちへおいで!」

その代わり、リーダーのミナトや、女性陣はとても優しく、相手を

してくれる。

「よく、あそこを逃げて来られたわねぇ」

あのならず者たちの手から、逃げてきた…と言うと、

彼女たちは目を丸くした。

「ごめんね!

 もっと早く気が付いて、助けてあげられたらよかったのにねぇ」

あくまでも、ミアは優しい。

こんな姉ちゃんなら、いいのになぁ~

ジュンペイはふと、そう思った。

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