第59話 この道は、どこに続く道?

 今のところは、誰にもぶつかることなく、スルスルと

前に進む。

LEDのブルーのライトのような、淡い光を頼りに、

先頭は、リーダーのミナト。

その後ろにミア。

ジュンペイの隣には、最年長のマリ。

大きな武器を持った、ガタイのいいタケシと、

一番後ろをハヤトが、警戒しつつ歩いている。

 時折ヒュン…と、ミナトが何かを投げると、確かめるような

素振りをしている。

 真っ暗な通路は、自然な洞窟に、人の手を加えたもののようだ。

所々に、コウモリのロボットや、ライトが当たると、キラキラと光る

目印が見える。

なるべく大きな足音を立てないようにして、気をつけて歩く

けれど…

たまに壁から崩れ落ちた石を踏んで、コツンと音をたてたりした。

方位磁石も何もないのに、どうやって方向が分かるのだろう…

ジュンペイは不思議に思う。

だが、目が慣れてくると、岩の壁が微妙に光っているのが見えた。


(あっ!)

 ジュンペイは、どこかで見た…

そう思う。

(それって、どこだっけ?)

だが…きっとそれは、この世界ではない、と思う。

 時々ミアが、心配そうに振り向いて、ジュンペイが後ろを

ついて来ているかどうか、確かめているようだ。

これだけの人に守られて、まるで自分がVIPのような、

ちょっぴり大物になった気分になる。

(実際は、そうではないけれど)

慎重に歩いていたつもりだったが、突然ピタリとミナトが立ち止ると、

「伏せろ!」

小声で、ジュンペイに向かって言った。


 なに?

驚いて声を出そうとするけれど…

ミアがあわてて、ジュンペイを抱きかかえるようにして、壁にピタッと

隠れるようにする。

何で気付いたのだろう?

すると、まもなくして、空気が変わる。

コツコツコツ…

足音と共に、丸い光の輪が、壁に映し出される。

各々が息を殺して、壁のクボミや陰に隠れていると…

光の筋がまっすぐに当たり、やがて何事もなかったように、

通り過ぎて行く。

口を手に押し当てて、息を詰め…

じぃっとその音が消えるのを待った。

ジュンペイの心臓が、ドックンドックンと、早鐘のように鳴る。

これが現実なのだ。

そう簡単には、裕太を奪還することが、出来ないのだ…

初めてジュンペイは、心から恐ろしい、と感じた。

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