第60話 もぐらのごとく、進めや進め!

 最後尾のタケシとハヤトは、肩にかついだ武器を、しっかりと

かかえて、険しい表情で、暗闇を見据えている。

(なに?もしかして、ボクを追っていたの?)

急に現実に引き戻されたようで、ワクワクした気持ちが、シューっと

風船がしぼむように、冷めた気分になる。

「よし、大丈夫だ」

 押し殺した声で、ミナトが言うと、こちらを振り返り

「大丈夫だ、ただの見張りのようだ」

ジュンペイに向かって、親指を立てる。

これは、遊びじゃないんだ…

あらためて、ジュンペイは思う。

冒険ごっこでもない。

これは、戦いなんだ…

(裕太は、大丈夫なのだろうか?)

ふいに、心配になってきた。


(裕太、待っていろよ!)

 そう心の中で、つぶやいていると

「大丈夫よ」

ふいに、最年長のマリさんが、ジュンペイに向かってささやく。

「あの子は、みんなに…守られているわ」

その節くれだった、ゴツゴツした手を、ジュンペイの頭に

乗せると、くしゃくしゃと撫でる。

「あなた、本当に優しい子ね」

 この感じ…何だか知っている気がする…

マリさんの手の暖かさを感じて、ジュンペイも次第に落ち着いてきた。

さらに…なぜだか、懐かしささえ、感じた。

母さんは、貧乏の子だくさんで、働くシングルマザーだ。

下に弟や妹のいるジュンペイは、こんな風に、優しくしてもらった

記憶がほとんどない。

さらに、自分には祖母の記憶もないのだ。

もちろん、父さんの記憶も…

(このオバサン…何者なんだ?)

不思議に思うけれど、マリさんはただ、黙って微笑むだけだ。


「こっちだ」

 ふいにミナトが、灯りで辺りを照らし出す。

そうして、もの慣れた様子で、複雑にジグザグと、この迷路のような

道を、通り抜けて行く。

(やっぱり、わかんないや)

すっかりジュンペイは、道を覚えるのをあきらめ、言われるままに

ついて行く。

それでも闇に、目が慣れてくると…

今までの地下の通路とは、また違う道に出て来た…と気が付いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る