第56話 頼もしい味方たち…

「ねぇ、どこへ行ったか、わかる?」

 ジュンペイは、リーダー格の男に声をかける。

彼のことを、みんなはリーダーと呼んだり、

《ミナト》と呼んだりしている。

まさか年上の彼を、呼び捨てしたら、ダメだろうなぁ~と思い、

ジュンペイは、何と話しかけたらいいのか、と迷っていた。

 すると《ミア》と呼ばれる、先ほどジュンペイに声をかけてきた、

若い女の子が…ジュンペイの肩をポンポンと叩き、

「たぶん、あそこよ!

 ドクターバードの研究室!」

他の仲間たちを、振り返って言った。

「ドクターバード?」

いきなり出た、人の名前に、

「それ、だれ?」

ジュンペイは戸惑う。

「じゃ、病院?」

でも、そんなの、あったっけ?

だけど…ドクターといったら、医者だもんなぁ~

そう単純に考えていた。


「ドクターはドクターでも、人を治す医者じゃないんだ」

 先ほどから、不思議な素材で出来た刀を振りまわしながら、

仏頂面の男が、怒鳴りつけるように言う。

「ちょっと、ハヤト!」

ミアは「しぃっ!」とたしなめる。

「そんな物騒なもの…ここでは、振り回さないでくれよ」

子供がいるんだぞ、とミナトが注意する。

「へっ、武器がないと、戦えないくせに!」

ギロリと、ハヤトと呼ばれた男が、ミナトをにらみつける。

 するとひときわ体の大きな男が、奥の方から、何やら木箱を運んできて、

「なぁ、ここでいいか?」

ドスンと下に下ろす。

(うわっ!おっきいなぁ)

まるでマンガに出てくる、巨人のようだ…

ジュンペイは珍しそうに、見上げた。


「タケシ、ご苦労さん!」

 すると1人だけ…年配の女性が近付いて来る。

(え~とぉ、誰かのお母さん?)

 他の4人は、おそらく10代後半~20代前半か?

だけどこの人だけは、50代~60代くらいに見える。

1人だけ、この中では異色な空気で、浮いていた。

「ねぇ…なんだ、このオバサンって、思っているでしょ?」

いきなりその人は、ジュンペイに向かって、にこやかに

笑いかける。

(えっ?)

この人、まさか…心を読むのか?

ドキンとして、読まれないようにと、目を伏せる。

「マリさんはね、この中でも、ダントツで強いんだよ!」

ミナトはジュンペイに向かって、話しかける。

「え~っ、この人が?」

とても、そうは見えない。

ただの気の良さそうな、オバサンに見える…

思わずジュンペイが、声を上げた。

するとフフッと笑って、

「いいんだよ、本当のことだから…」

ホント、正直な子だね、と彼女は笑った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る