第285話 心配症の裕太くん

 本当に、この鍵、何にでも使えるんだな?

裕太はポケットに突っ込んで、忘れていた鍵に、そうっと手を

触れる。

「その鍵で…あの扉を開けてくれ」

ジュンペイがまっすぐに目を向けると、

「ほら!」と裕太をうながす。

だが裕太は、なぜか迷ったように、モジモジとしている。

「どうした?」

けげんそうな顏で、ジュンペイは裕太を見つめる。

「ほら、早くしろよ」

少し焦れたように、ドアを指し示す。

「うん…」

そう返事をするけれど、どうも裕太の様子がおかしい。

「どうした?トイレか?」

「いや」

頭を振る。

「あのドアを開けたら…巨人に襲われたりしない?」

こわごわとドアを見つめる。

「はっ?」

ジュンペイが大きな声を発するので…やっぱり変なのかなぁ~と

裕太は少し傷付く。

「さぁね」

フンと、ジュンペイは横を向くと

「それじゃあ、ボクがあける。

 鍵を貸して!」

はい、と手を差し出す。

裕太はしばらく、迷っていたけれど…

はぁとため息をつくと、

「わかった。やっぱり自分でするよ」

そう言うと、ポケットから鍵を取り出した。

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