第257話 不思議な袋

(残念だけれど、これはスカだなぁ)

 これはムリだ、と思って、通り過ぎようとする。

だけどもジャックは、その場に立ちすくみ、

「ボク…いいものを持っているんだ!」

すかさず、自分のポケットを探る。

(えっ、何だって?)

裕太はただ黙って見守っていると…

ジャックの手の中から、茶色くて、かなり古びた皮の袋が

チラッと見えた。

(なんだ?財布か?

 こんなのに、入るわけがないだろ?)

まさかサンタクロースのかつぐ、あの袋でもあるまいし…

呆れて見る裕太の前で、なぜだかジャックは、とても平然と

した顔で、その袋を開いた。


 大きな鍵に手を触れるので、さすがに裕太は

「何をやってるんだよ!

 そんなのに、入るわけがないだろ?」

思わず口をはさんだ。

だがそんな反応は、あらかじめ予想がついていたのか、ジャックは

フフンと鼻で笑う。

「そう思うだろう?

 だけど、違うんだなぁ~」

むしろ意味あり気に、ニヤリとする。

それからおもむろに、鍵を手に取ると…

柄の部分を軽く持ち上げて、ゆっくりとその皮の袋に、差し込んでいく。

(バカだなぁ~

 ほら、どう見ても、はみ出るだろ?)

そう思うのに…

なぜだか、スルスルと入っていく。

(どうして?無理にすると、袋が破れるぞ)

けれども、あまり言っても、ムキになるだろう…と言葉を飲み込んだ。

(いくら何でも、ムリだとわかったら、そこで止めるだろう…)

妙に思って見ていると…

信じられないことに、奇妙なことが起こった。


 あんなに大きな鍵が…

自分たちの背丈くらいある鍵が・・・

みるみる見えている部分が、小さくなっていく。

「なんだ、こりゃ!マジックか?」

まるで…底なし沼のように、スムーズに半分まで、縮まっていた。

「へっ?」

一体、どういうカラクリか?

(穴があいているのか?)

裕太は思わず、身を乗り出した。

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