第256話 このカギ、何のカギ?

「ね、あれ、何の鍵かなぁ?」

 白い陶器の皿の上に、とてもシンプルな、これぞ鍵…

という形の金色の鍵が、トンと無造作に置いてある。

「こんな所に置いといても…大丈夫なのかなぁ?」

裕太がしげしげと見つめる。

「そんなの、わかんないよ」

心配性なヤツだなぁ~

ジャックが笑う。


 さっき、自分は泥棒だ、と告白した割りには、とても無邪気だ。

だがジャックの目は、間違いなくこのカギをロックオンしている。

「この鍵って…きっと、金庫か何かの鍵なんだろうなぁ」

そう言うと、目をキラキラとさせて、

「やっぱり、お宝がどこかにあるんだよ!」

興奮したように言う。

(あれっ?)

 裕太はふと気が付く。

(この感じ…何となく、ジュンペイに似ているなぁ~)

 その無鉄砲なところ。

 次から次へと、怖がらずに飛び込む大胆なところ。

 いきなり、走り出すところ…

(やっぱり、そうだ)

思わず裕太は、ニヤニヤとする。

「なんだよ」

気持ち悪いヤツだなぁ~

ジャックがブスッとした顔を向けると、裕太はあわてて

「違うんだ」

そう言いながらも、

「いや、やっぱり宝探しが好きなんだなぁ~と思って」

にこやかにそう言う。

「そんなの!男はみんな、宝の話が好きなんだよ」

バカだなぁ~と言いながら、ポンポンと裕太の背中を叩く。

「でも、この鍵!

 どうしたらいいのかなぁ」

シンプルな形だけれど、何かの鍵なのは、間違いないだろう。

だけど鍵は鍵でも、こんなでっかい鍵!

どうやって運ぶんだ?

自分たちの手には負えない…

裕太は考え込んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る