第190話 目指すは、あの場所

 それにしても、どこが最強のメンバーなんだ?

思わず裕太は、笑いたくなる。

じっとしているのが、苦痛なジュンペイ。

理性的で背中に羽をもつ男、ショーン。

人間の言うことを理解する、竜のファルコン。

あとは…道しるべの石。

せめて、サキアさんのボディーガードのミスターがいれば、

最強なのだろうが…

そう思っていると、

「地図はなくても、案内する石があるから、上等だろ?」

意外なことに、あの野生児のジュンペイが、諭すように言う。

「でもさぁ」

ヘラッと笑うと、急に媚びたように、上目遣いをする。

「ねぇ~あのツルがあったトコって、この上辺りになるのかなぁ?」

タイミングを見計らっていたのか、急に裕太に聞く。

「えっ、どうだったかなぁ?」

それにしても…ほんの一瞬、見ただけなのに、よく覚えているなぁ~

逆に恐るべき集中力に、裕太は驚く。


「ねぇ、行ってみようよ!」

 ジュンペイが楽しそうに、裕太の腕を引く。

これだったかぁ~

さっきから、ソワソワしている原因が、これでわかった、と思う。

「急ぐわけじゃないだろ?」

「まぁな」

「他に行くトコが、あるわけでもないんだろ?」

「上の階に、行かないといけないけどな」

裕太としては…さっさと済ませて、こんな訳のわからない世界を、

おさらばしたいところだが…

でも…

と前方を見つめる。

せっかく知り合ったショーンとファルコンとは、もう少し一緒に

いたい…というのも、事実だ。

(観光とか、テーマパークに、遊びに来たんじゃあないんだぞ!)

そう思うのに、何となくジュンペイの気持ちもよくわかった。

じぃっとこちらを見つめる目が、まるでビー玉みたいだ。

それとも、あめ玉かな?

ワンコか?

などと、裕太は思う。

(ジュンペイ…帰りたくないの?)

「ね、まさか…家に帰ったら、浦島太郎みたいに、総白髪になったり

 しない?」

つい、ショーンの方を向いて言う。

「あっ、おまえ!

 そんなこと、考えていたのか?」

バカだなぁ~

ジュンペイは、ヘラヘラと笑う。

「だって、ここの世界と、あっちの世界だと、時間の流れが違うかも

 しれないだろ?

 もしも、誰もいなかったら?」

そう言うけれど、

「それは、その時に考えれば、いいだろ?」

ねぇ、行こうよぉ~

さらに熱のこもった眼で、ジュンペイはせがむように、裕太を見つめた。

 まぁ、ムリもない。

やっと、あの憧れのトオを上るのだ。

何もないのならば…これほど、魅力的なことはない。

男の子ならば、何があるのか、ドキドキワクワクするのは、当然といえば

当然なのだ。

 それに、と裕太は思う。

ジュンペイが行ってしまって、自分だけが、1人取り残されるのだけは、ごめんだ!

そんなことを考えて、葛藤するのだった。

 さて、どうしよう?

救いを求めるように、裕太はショーンをかえりみる。

ショーンは困ったように、肩をすくめると

「うーん」と腕を組む。

「ちょっと…だけですよ」

まさかの答えだ。

「何しろ、この建物は…

 ここ最近、ドンドンドンドン増殖しているようですからね。

 目指す部屋が、どの辺りにあるのか、見当もつかないし…」

いつものショーンとは違う、やけに重たい口調でそう言った。





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