第189話 旅に出よう!

「敵が襲って来るかもしれない。

 側を離れるなよ!」

特にジュンペイの方を向いて、ショーンは辺りに耳を

澄ませている。

「大げさだなぁ~」

ヒャッヒャッヒャッと子ザルのように、ジュンペイが

笑う。

「大げさじゃないよ!

 死にたくなかったら、くれぐれも、スタンドプレーを

 するなよ」

裕太も厳しい顔で、釘を刺す。

「とにかく、回りには気をつけろよ!

 いきなり何かが、襲って来るかもしれない」

ホント、心配性だなぁ~

裕太もそう思うけれども、ドクターバードのこともあるし、

ここはおとなしく従おう…とそう思う。

「せめて…見取り図とか、地図とかあればなぁ!」

裕太が悔しそうに言うけれど…

「何言ってんだよぉ。

 冒険なんだよ!

 トラブルは、つきものさぁ」

すっかりその気になって、涼しい顔で、ジュンペイが言う。

勇ましく、海賊にでもなったつもりか?

「体力消耗したら、いけないから…

 水とか、食料とか、ちゃんと調達したいけどなぁ」

ショーンは、長期戦を予感して、そうつぶやいた。

「え~っ!そんなトコ、あるの?」

ジュンペイが聞くと、

「うん、所々でそういう部屋があるみたいだ」

どこで知ったのか、自信なさ気にそう言う。


 それにしても、今ここにいる場所が、トオのどの辺りに

なるのか、彼らは全く見当がつかない。

「ねぇ、やっぱりどこかへ行かないといけないの?」

今は、敵の気配は見られない。

どこかに、潜んでいるのかもしれないが…

見た感じ、どうやらメンテナンスのための通路らしき場所に、

入り込んでいるようだ。

「このまま、敵に見つからない所にいたいんだが…」

 本音はそうだった。

だけどこのままじっとしていても、話が進まない。

「わかるの?」

期待のこもった眼で、ジュンペイはショーンに向ける。

うーんと、しばらく考え込んだ後

「いや、さっぱりわからん」

案外あっさりと、あきらめた。

(大丈夫かぁ?こんなので)

やはり不安ではあるけれど。

「気にしても、しょうがないぜ!

 ま、ボチボチ行こうぜ」

ジュンペイは、さして気にすることなく、のん気な顔で笑った。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る