第218話 作戦開始!

「オバサーン、トイレ~!」

「ボクは、お水~」

 裕太とジュンペイが一斉に騒ぐと、案の定巨人の女は悲鳴

のような声をあげ、

「ちょっと待って!

 いっぺんに言わないでよ」

明らかに、困っているようだ。

 ジュンペイは、その反応にヘラッと笑うけれど、すぐに

「オバサーン、のどが渇いたよぉ」と叫ぶ。

さらに重ねて、

「ボクはもう、ガマン出来ないよぉ」

裕太もジュンペイの真似をして、足をジタバタと踏み鳴らす。

どうもこの巨人の女は、子供の相手には慣れていないようだ。

(やった、うまくいくかな?)

ジュンペイは、ほくそ笑む。


「あ~はいはい、はいはい!

 わかった、わかった!

 トイレね、トイレ!

 トイレは…ここの階段の側をまっすぐに行って、突き当りに

 あるから、そこに行ってね。

 わかった?」

まるで交通整備の人のように、テキパキとした口調で、裕太に

向かって言う。

「それから、お水ね?

 台所は、ここを右に行ったところよ!

 すぐにわかると思うわ」

 本来なら、案内してあげたいところだが…

さすがのマーサも、2人を1度に、連れて行くというわけには

いかないようだ。

焦った顔で、2人に向かって話しかけた。


(やるじゃん)

 裕太はそう思ったけれど、口には出さず…

「わかった!

 オバサン、ありがとう!」

そうひと声叫ぶと、裕太はわざと足音をたてて、階段に向かって

走り出す。

ジュンペイもピョンと跳ねると、巨人の足元をすり抜けて、

一目散に走りだす。

「ありがとう~!」

だが2人は、教えられたのとは全く違う方向に向けて駆け出す。

あまりにもすばしっこいので、それにはマーサは気付かないようだった。

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