第217話 たくらむ子供たち

 巨人の女は、もともと人のよい性格のようだ。

(だから…だまされるんだろうなぁ)

他人事ながら、心配になる。

 まぁこの場合は、その性格が幸いするのだから、皮肉な

ものだ。

裕太は思わず(ごめんなさい)と心の中で、手を合わせた。


 それにしても相変わらず、巨人の姿が見えない。

だが、その方がいい。

今のうち、のぞいてやれ!

思いっきり、裕太とジュンペイのテンションが上がる。

『まずは、二手に分かれよう』

 実はこの家に入る前に、事前に話をつけていた。

「どうするんだよ?」

裕太が聞く。

「そうだなぁ」

ジュンペイは、少し考える。

「トイレに行きたいとか、何とか言えばいいんじゃないか?

 さすがに、その辺にされたら困るから、きっとうまくいくさ!」

ほら、楽勝だろ?

ジュンペイが、ニヤニヤしながら言う。

「まずは、あそこ!

 入り口から見えてる、あの階段で落ち合おう」

何だか、ゲームをしているみたいだ!

嬉しそうに言うジュンペイに、裕太はやや冷めた目付きで

「そんなもんか?」と向き直る。

そう簡単に、うまくいくものか?

裕太はジュンペイほど、単純には考えられない。

何となく…気になるのだ。

するとジュンペイは、

「大丈夫だよぉ~

 うまく相手の気を、そらせばいいんだ」

ヘラリと笑う。

ホントに、そううまくいくものか?

裕太だって、内心ドキドキものだ。

 もちろん、この城を探検したい気持ちはあるのだけれど…

そんなだまし討ちみたいなマネをするなんて、

どうなんだろう?

だが…今までの作戦と比べると、かなりジュンペイとしては、

おとなしい方だ。

うまくいくかなぁ~

不安そうな顔をすると、

「大丈夫、大丈夫!」

ポンポンと裕太の背中を叩く。

「うまくいくよう、祈る!」

Vサインをすると、

「さぁ~行くぞぉ!」

まっすぐに、前を向いた。

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