第216話 やはり、あの子は?

「人間の子供が、ここに来るのは…これで2度目だねぇ」

 マーサがのどかな顔で、そう言うので…

これが初めてではないのだ、と裕太は知る。

(それって、誰?)

 普通に考えると、ジャックと豆の木なんだから、当然

それは、ジャックだろう…

自然と裕太はそう思う。

「ボクたち、さっきここへ来たけど…

 怪しい人物は、見かけませんでしたよ」

真面目な顔つきでそう言うと、じぃっと巨人の女を見上げる。

「そうなの?友達じゃないの?

 なら、君たち…ここへ何しに来たの?」

明らかに警戒しているようだ。


 裕太はツンツンと、ジュンペイの腕を突っつくと、

(ねぇ、どうするの?)

目で合図する。

「何よぉ、コソコソして…

 変な子ねぇ」

妙に落ち着きなく、モジモジとしている2人のことを、

マーサはけげんな顔で見ている。

「そういえば…さっき来た子も、おかしな子だったわ」

思い出すと、またもブスッとした顔になる。

(さっき来た子?)

それを聞くと、ふいに裕太は、ジュンペイと目を見合わせる。

「あのぉ~お水をいただけませんか?

 何だかとっても、喉が渇いて…」とジュンペイ。

「ボクは、トイレを貸してもらえませんか?」

わざとらしく、裕太は足をバタバタとさせる。

「えっ」

いきなり様子がおかしくなった子供たちのことを、大きな目を

向けて、じぃっと見る。

「お水?おトイレ?

 なぁんだ、そうだったの?」

あら、それは大変ね!

勝手に納得したようで、彼女は人の良い笑顔を向けた。

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