第215話 はじめまして、マーサ!

「ね、ここに…1人でいると、寂しくはないですか?」

 裕太は丁寧に、この人に聞く。

「まぁ、退屈だけどね!

 もう、慣れたわ。自由に出来るしね」

どう見ても…巨人の奥さんではなさそうだ。

(確かに、留守番と言ってたしな。

 何とか、うまく仲良くはなれないかなぁ~)

裕太は考える。

「あっ、あのぉ~何と呼んだらいいの?」

今さらながらに聞く。

何となく、この巨人の女のことを、オバサンと呼ぶのが

気が引けたからだ。

「えっ、なんで?」

巨人の女は、驚いた顔をする。

「だって!

 オバサン、オバサンって呼ぶのも…

 アレでしょ?」

女の人って…幾つになっても、オバサンと呼ばれるのは、あまり

好きではないはず。

これで少しは、心を開いてくれればいいが…

そう思い、彼女を見上げる。

「それもそうね」

案外すんなりとうなづく。

初めてニッコリと笑った。

(おっ!)

裕太はめざとく気付く。

だがジュンペイは、

「えぇ~っ!」」

つまらなさそうな顏をする。

「なんで、そんなことを気にするんだよぉ」

それよりも、早く中に入ろうぜ、と落着きなくキョロキョロ

している。

少しでも早く、部屋の探索をしたいらしい…


 だが裕太には、考えがある。

「いいから!」

小声で「しぃっ!」とささやくと、裕太はなるべく愛想のいい

顏をして、

「ボクの名前は、裕太!

 オバサンは?」

出来るだけ、甘えた口調で巨人の女を見上げる。

「私?私は…」

裕太とジュンペイの視線にぶつかると、少し困ったような、

はにかんだ笑いを浮かべると

「私は、マーサ」

思ったよりも、明るい口調でそう言った。

「マーサ?

 そう、マーサなんだぁ」

ニコニコしながら繰り返すと、子供にあまり慣れていないのか、

彼女は固い表情のまま、立ち尽くしている。

「はじめまして、マーサ!

 ボクたち…このお城は何だろう、と思って、ここまで来たんだ!」

裕太はマーサを見上げて、大きな声で言う。

嘘ではない。

もちろんここが、目的地ではないけれど…

すると

「ふーん」と言いながらも、マーサはまんざらでもない顏をした。

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