第214話 敵?味方?どっち?

「いつから、いない?

 そうねぇ…ほんの少し前からよ!

 いつだったかしらねぇ?」

 巨人の女は考え込む。

(えっ、なにかあったのか?)

裕太は聞いていいものかどうか、迷っていた。

「じゃあ、オバサンって…

 いつから、ここにいるの?」

とりあえず、話を変える。

「えっ?」

さっきから…何を聞いてくるのだ、と巨人の女は警戒

してるようだ。

「そんなの…ここの先代からだから…

 もう、覚えてはいないわ!

 あなたたちの生まれる、ずーっとずーっと前よ」


 そう言われれば、そうだ。

先代がどのくらいいたのか、知らないけれど。

これだけ大きな家だったら、家政婦さんがいても、

全然おかしくはないだろう。

「そうなんですか?」

一旦は納得して、引き下がったものの、やはり気になる。

(巨人さん…ホントにここに住んでいるのかなぁ)

 それにしては、何だか全く人の気配がしない。

もともとこの屋敷は、生活感があまりないのだ。

違和感の原因は、これか…

裕太はひそかに、そう思っていた。


「じゃあ、オバサンって…もしかして、ずーっとここにいるの?」

 先代からって、一体何年前なんだ?

裕太には、見当もつかない。

「そうよ!」

だけど彼女は、とても自慢気にうなづく。

(一体、どうするんだ?

 こんな時に…

 こうなったら、この人を味方につける方が、いいんじゃないか?)

その考えが、裕太の頭をよぎる。

どうひいき目に見ても、圧倒的に自分たちが不利だ。

この巨人の女も、敵に回したくない相手だ。

それにこの人は、女性だ。

(巨人よりも、仲良くなるのは、簡単なのかもしれない)

ふいに裕太は、そう思った。

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