第200話 半分鳥で、半分人間?

(どれだけ、強いんだ)

 裕太は、野生児ジュンペイを羨ましく思う。

「神経毒か何かが、あるみたいだ。

 あんまり吸うなよぉ」

さっき別れたはずのショーンが、そこにはいた。

(呼んだのか?)

一瞬そう思うけれども、今はそれどころではない。

「はい」

ジュンペイが、紙袋を差し出す。

(なんで、こんなものを持っているんだ?)

不思議に思っていると…

「とりあえず、これで息を整えて」

慣れた口調で、ジュンペイがにぃっと笑った。

 こんなので、本当に楽になるのか、と思うけれども

「ありがとう」

軽く目をつむって、裕太は胸を上下させた。

「深く息を吸って、吐くんだ。

 そうしたらそのうち、落ち着いてくるはずだ」


 これが、あのジュンペイか?

まるで別人のように、落ち着き払った顔で言う。

どうして、そんなことを知っているんだ?

裕太はさらに不思議に思う。

「うちは、弟妹がたくさんいるし、喘息もちもいる。

 だからいつも、こういう袋を、持ち歩いているんだ」

ま、習慣だなぁ。

そう言って、手渡す。

あのジュンペイが、こんな気遣いが出来るのか?

(やっぱり、人は見かけによらない、というけれど、ホントだなぁ)

しみじみと、そう思う。

「こんなの…常識だよ!」

怒ったようにそう言うと、ジュンペイはすっくっと立ち上がる。

それでも

「で、どう?落ち着いた?」

裕太の顔をのぞき込んだ。

「大丈夫だよ」

 裕太はそう言うと、ジュンペイに無言でその紙袋を返そうとする。

「いいから、持っとけ」

だがジュンペイは、無理やり裕太に押しやった。


「どうした?」

 2人がケンカをしている、と思ったのか、ショーンはあわてて2人に

近づく。

「いや、裕太が」

ジュンペイが、チラリと裕太を振り返ると

「どうした?」

ショーンは、裕太の異変に気付いたようだ。

「あの…何か空気が」

それだけ言うと、ゲホッゲホッと再び咳き込む。

「おい、大丈夫か?」

ショーンは、裕太に手を触れる。

裕太は軽く頭を振る。

「ショーンは、何ともないの?」

何とか裕太が聞くと

「あぁ」

フッと笑ってみせると

「おかげさまでな!」

ニヤリとする。

「何しろボクは…半分鳥だからな!」

「そう?」

何だか、カッコいいな!

裕太は羨ましそうに、ショーンを見上げた。

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