第71話 潜入!虚飾の館

「あなたは…とても、きれいだわ」

 自分を卑下するショーンに向かって、マリさんがあらためて

声をかける。

「それは、どうも」

ニヒルな口調で、短く答えると

「実はここに…ボクの相棒がいるんだが、連れて行ってもいいか?」

年長者のマリさんに向かって、聞いた。

「それはいいけど…あなた、ここから出て、どうするつもり?」

それはジュンペイも、気になっていたのだ。

 異形の美しき翼を持つ男は、

「うん」とつぶやく。

「えっ」

どうやら、そこから先は、あまり考えが及んでいなかったらしく、

ショーンは困った顔になる。

おそらくは、ここを出ることしか、考えていなかったのだろう。

「き、決まっているじゃないかぁ~

 キミたちと一緒に、ここをぶっ潰す!」

いきなりニヤリと笑うと、力をこめて言う。

「しぃっ!」

思わずジュンペイが

「声が大きい」とたしなめる。

 どこでドクターが聞いているのか、わからないからだ…

「あら!

 ずいぶん物騒なことを言うのね」

そう言いながらも、マリさんは何だか嬉しそうだ。

「えっ?そのために、来たんじゃあないの?」

まさか笑われるとは思ってもいなかったのか、

ショーンはキョトンとしている。

「当たり前でしょ!

 そんなことをしたら…私たち、殺されてしまうわ」

そう言いながらも、なぜか言葉とは裏腹に、ニヤリと笑う。

 このオバサン…もしかしたら、とんでもないことを、

考えているのかもしれない…

ふいにジュンペイはそう予感した。


 ショーンの身体は不思議だ…

暗闇でも、ぽぅっと身体がほの白く光っている。

翼を出すようにして、衣服を身に着けているけれど…

その衣から、ほんのりと光が透けて見える。

(まるで蛍のようだ…)

昔母さんと見た、あの蛍を思い出す。

「きれいだ…」

思わずジュンペイがもらすと、

「おまえ…さっきから、きれいきれいって…ボクは一応男だ!

 そういう趣味はないぞ」

いきなり身体をねじって、ジュンペイに向かって言う。

「えっ」

そんなつもりで、言ったわけではないのに…

思わずジュンペイの顏が、赤く色づいていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る