第173話 不思議な帽子

 あろうことか、裕太たちを幽霊扱いにして、正規のルートを

通らなくていい…と、サキアさんが言う。

どういう理屈なのか?

なんで、と思うけれども、その方が都合がいいというのなら、

まぁそれでもいいか、と気にしない裕太だ。

(これって、サキアさんの手抜き?サボリ?)

「いいの?」

何だかよくわからないけれど、得したなぁ~と思ったのか、

「ラッキー!」

素直にジュンペイが、ガッツポーズをした。


「そうそう、大切なことを忘れてた」

 おもむろに、サキアさんが切り出す。

「私はね、挑戦者たちに、魔法のカードを渡すことにしているの。

 本当は、受け付けした時にするのだけど、あなたたちには特別に、

 ここで占ってあげるわ」

そう言うと、いきなりまた帽子を脱いで、その中に手を突っ込む。

どれだけ、物が入るのだろう?

今度は、カードを取り出した。

「げっ」

 ジュンペイが妙な声を上げる。

「ね、その帽子…中はどうなっているの?」

やはり、ドラえもんのポケットの帽子版か?

すき間から、のぞき込もうとする。

「あら、のぞき見はダメよ!」

ピシッとジュンペイの手を叩くと、ストンとその場にしゃがみ込む。

そこにある平たい石を机にして、そのカードを広げる。

「こんなこと…いつもしているんですか?」

珍しいものを見るように、裕太が話しかける。

慣れた手付きで、ささっとカードを並べると

「しぃっ!」

サキアさんは、まるで別人のような真剣な顔つきで、鋭い声を

出す。

「ちょっと、集中したいから、しばらく黙ってて!」

その勢いに押されて、裕太はピクリと肩をすくめると、シュンと

黙り込んだ。





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