第19話 マイペースな子供たち

「ねぇ、どこでもドアって、ない?」

「はっ?」

「じゃ、スモールライトは?」

「はぁっ?」

「じゃあ、タケコプターでもいいや」

「おまえ…ふざけているのか?」

 とある武器を取り扱う店のカウンターで、先ほどから

ジュンペイは、店主とやり合っている。

「ねぇ、オジサン!

 ドラえもん、知らないの?

 ドラえもん!」

 国民的アニメの主人公の名を連呼する。

ダン!

木のカウンターを叩きつけると、恰幅のいい男性は、顔を

赤くさせる。

「何、わけのわからないことを、言ってるんだ?

 おい、ボウズ!

 大体おまえ…親はどうした?

 家出してきたのか?

 大人がいないと、武器は売らないよ!

 未成年は、お断り!」

鼻息も荒く、ジュンペイをにらみつける。

「ちょっとぉ~裕太も何か、言ってやれよぉ。

 このわからず屋のオジサンに!」

おいおい、大人を相手に、ケンカをふっかけるのは、ダメだろ?

ハラハラしながら、見ている裕太をぐぃっと引っ張ると、

ジュンペイは自分の前に押し出した。


「えっ、でも、ボク…」

困り果てて、オロオロしていると

「おまえもか!この家出小僧!」

まるで飛び掛からんばかりに、カウンター越しに、赤ら顔の男性は

酒臭い顔を近付ける。

「いや、それは…」

完全に相手の雰囲気にのまれて、裕太はたじろぐ。

「ちぇっ」

ジュンペイは舌打ちをすると、

「じゃあ、姿を消すマントとか、空飛ぶホウキとか?」

あきらめきれないジュンペイは、まだ粘って、店主に挑みかかる。

店主ははぁ~とため息をつくと、裕太たちの背後を見た。

「ね、すまないけど、話を聞いてやってくれない?」

 やはり気になったのか、カランとカウベルを鳴らして、サキアが

入って来た。

「あっ、サキア様!お疲れ様です!」

急に口調が変わる。

先ほどのなめきった態度が、一転してピシッと姿勢を正した。

 実は先ほどから、ボディーガードから話を聞いて、静かに

のぞいていたのだが…

見るにみかねて、つい口を出したのだ。


 サキアは言い訳のように

「まぁ」と前髪をいじると、

「連れというかね、行きがかり上、ほっとけなくてね」

困った顔をする。

店主は揉み手をして、

「左様ですか」

訳知り顔をすると、

「仕方がないですね。

 本当は…未成年には、売れないのですが、サキア様がいらっしゃるのなら、

 特別に…」

コホンと咳払いを、1つした。

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