第75話 暗闇の向こうには…

 慎重にドアを開くと…

今度は闇の中で、何かがうごめくのが見えた。

(裕太?)

いや、何かがいる?

明らかに、暗やみの中で、はぁはぁという動物の息遣いが

聞こえる。

(なに?犬?)

「おっ」

ジュンペイが、暗闇に目をこらすようにして、視線を

向けると…よくは見えないが、何かがいることだけは

わかった。

「しぃっ!」

 ジュンペイが侵入しようとするのを、ショーンが押し

とどめると、代わりに彼が、ゆっくりと部屋の中に足を

踏み入れる。


 目の前にいるのが、何なのか…

暗闇でうずくまっていた生き物が、ゆっくりとこちらに

近付いて来る。

(なんだ、あれは?)

口に手をあてて、壁ぎわにへばりつくようにして、固まって

いると…

マリさんがスッと、ジュンペイの肩に手を置いた。

 ゆっくりとショーンが、その動物に近付いて行く。

彼の足取りは、まったく怖がっている様子はなく、むしろ

もの慣れた様子で、歩を進める。

(なんだ?この肝の座りようは…)

あまりにも堂々とした後ろ姿に、黙って見守っているだけだ。

 ゆっくりとショーンは、その動物との距離を縮めて行く。

すると次第に、その生き物の姿が、彼の発する光のおかげで、

くっきりと見えてきた。

(なんだ、あれは?)

思わず裕太は、身体をこわばらせる。

だが彼の目は、その正体に、釘付けになっていた。



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