サキアの休日…29

 宣言通り、サキアはトオのある街へと向かった。

とはいっても…地下の町から出て、さほど遠い場所ではないので、

帰ろうと思えば、帰ることの出来る距離なのだ。

ただし…命の保障があれば、という話なので、危険という意味では、

ためらうのも、無理のない話なのだ。


「わぁ!」

 久しぶりに出て来た、トオのある町は…

地下の暮らしに慣れているサキアにとって、まぶしく見えた。

たくさんの行きかう車。

そして、明らかにトオへの挑戦者と、一目でわかるいで立ちの人たち。

みんな、戦いの前のひと時の癒しを求めて、この小さな町へと、

訪れるのだ。

 サキアもブラリと、この商店街を散策することにした。

マリさんのお供で、地下の入り口の近くの店に、行くことはあっても、

こんな風に、歓楽街を歩くのは、まだ18の誕生日を迎えたばかりの彼女

にとっては、初めてのことだった。

 すると、あの男がサキアの目の前に、姿を見せた。

「えっ?」

なんで、ここに…?

まさか、こんな所まで、追いかけてくるとは、思ってもいなかったので、

サキアはその場に立ち尽くす。

「何で、あんたがここにいるのよ。

 帰ってよ」

全てのしがらみを、あの故郷に捨てて来たはずなのに…

サキアはすっかり、白けた気分になる。

そうして、その幼なじみの顏をにらみつけた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る