サキアの休日…28

 サキアはその夜、宣言通りに家を出た。

マリさんは、黙って彼女を見送った。

「キヨラ…あなた、本当は…サキアの気持ちを、知っていたんでしょ?」

マリさんは、静かに話しかける。

「何のこと?」

玄関のドアに寄り掛かり、通路を眺めて

「あなた…サキアの言う通りよ。

 本当に欲しいものがあるなら、遠慮せずに、手を伸ばせばいいのよ」

静かな声で、そう言うと…

マリさんは、穏やかな笑みを浮かべた。

「あなたたち…ホント、見ていると歯痒いわ!

 どうしてみんな、互いにそこまで、気を遣うのかしらね!

 キヨラも、ミナトも」

最後のひと言を、付け足すように言うと、

「えっ、ミナトも?」

そこでビクン…と、彼女は肩をこわばらせた。


「そう…あなた、知っているんでしょ?」

 疲れたように、ため息をつくと、マリさんは深い悲しみをたたえた瞳を、

キヨラに向ける。

「そう…かしら?」

キヨラが、胸に手をあてる。

それを見つめると、

「時には、人を傷つけてでも…

 自分の気持ちに、正直に生きる、という選択肢もあるのよ」

まるで…すべてを悟ったような目をして、マリさんはキヨラに、そう

話しかけた。

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