サキアの休日…27

 キヨラの手が、一瞬宙で止まる。

空をつかむようにすると、スッと引っ込める。

「それは…私が生れた時から、決められていたことだし…」

何となく、歯切れの悪い言い方だ。

サキアはまっすぐに、キヨラを見ると

「いいの?それで。

 一度その世界に入ったら、もう二度と好きな人と、一緒になれない

 んでしょ?」

さらに、言葉を重ねる。

もっと自分に、素直になりなさい…というように、サキアが手を

差し伸べる。

だがキヨラは激しく頭を振り、

「無理なことを、言わないで!

 それに、そんな人…いるわけがないじゃない」

うつむいたまま、サキアと目を合わせようとはしない。

「そうかしら?

 私の目を見て、言える?」

サキアはじぃっと、キヨラの顏をのぞき込む。

「とにかく、ムリなの!

 もう、やめて!」

サキアの目を避けるように、キヨラは顔をそむける。


「やっぱり」

 それが、答えなのね。

ようやくサキアは、ゆっくりと口を横に引くと

「あなたはまだ、知らないと思うけど…

 今ならまだ、間に合うわ。

 もう一度、よく考えなさい」

キヨラの肩に、手を置いた。

キヨラはただ、小さな子供のように、頭を振ると

「もう、ムリなの。間に合わないの」

そう小さく繰り返す。

「なぜ?」

サキアがさらに、肩を揺さぶる。

だが…彼女は決して、それ以上は口を割ろうとはしなかった…


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