第133話 明かされる秘密…

「そうかぁ~難しいよねぇ」

 そう言うと、キヨラさんは遥か彼方にあるトオを見つめる。

大きいため、近く感じるけれど…

それは気のせいだろう、と裕太は思う。

「もともと、この辺りは…竜神の村だったの。

 それを政府によって、追いやられたのは聞いたでしょ?」

キヨラさんが、裕太を見るので

「はい」とうなづく。

「それでね、私たちが住んでいるあの村…

 どこだか、わかる?」

今度は暗緑色に変化した瞳を向けて、答えを待つ。

「それは…村のはずれとか?」

「ん…まぁ、そうかもね」

そう言うと、まっすぐにトオを目指す。


「あの地下はねぇ…実はトオの1部なの」

 挑むように言った。

「えぇっ?」

それは…考えたことがなかった、と裕太はジュンペイを見る。

「だって…だいぶ離れているじゃあないかぁ」

ここまでたどり着くのに、どれだけかかったんだ、とジュンペイは

キヨラさんに向かって言い返した。

だけどキヨラさんの表情は、変わらない。

澄ました顔をして、

「それは…迷路を通ったからよ」

あっさりとそう言った。


「えぇっ?」

「なんだ、それ!」

裕太とジュンペイは、声をそろえて叫ぶ。

(あれが、迷路?)

 確かに真っ暗だし、ややこしくて、うねうねとしていたけれど、

裕太にはまだ、ピンとはこない。

「だからね!何が言いたいかと言うと…

 わざわざ地上に出なくても、ここからトオへ行く抜け道が

 あるってこと」

自信満々な様子で、子供たちに向かって、艶然と微笑んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る