第132話 穴の向こうには…?

 いつの間にか、穴の外に出ていたようだ。

久しぶりに、外の光りを感じる…

「もしかして、外に出たの?」

「ここって、地上なの?」

光りに向かって、まっすぐに歩いて行く。

「ねぇ、見て!」

穴の向こうに…うっすらと、高い建物のようなものが見える。

「ねぇ、ここは?」

裕太は、キヨラさんを振り返る。

「あれを見て!

 あれは…冒険者たちが目指すトオなのよ!」

やや興奮したように、はずんだ声が返って来る。


(あれ?)

だが、裕太は奇妙に思う。

(トオって…もっと向こうの方ではないの?)

どういうことなんだ?

ボクたち、もしかしたら…

こっちの方へ、戻って来ていたのか?

だが、キヨラさんは、何も口にすることはなかった。

 それに、地下にずっと住んでいる人が、どうしてあのトオの

ことを知っているのか?

裕太の頭の中では、疑問でいっぱいになった。


「でも…なんで?

 ここは、地下でしょ?

 どうしてあのトオが見えるの?」

まさかボクたちを、だましていたのか?

ジュンペイが、湯気が吹きそうなくらいに、息巻いている。

 だがその質問がくるのは、あらかじめ想像がついていたのか、

キヨラさんは思いのほか、冷静だった。

「ここが、どこだか、わかる?」

再度同じ質問を、ジュンペイに向ける。

ジュンペイは「バカにしているのか」とブスッとすると、

「だから…地上なんでしょ?」

何で聞いて来るんだ、とふくれっ面で答える。

だがキヨラさんの意図は、そうではなかったようで、

「それは、半分正解。

 でも、残り半分は不正解」

何だか意味不明なことを言う。


一体、何が言いたいのだろう?

今ひとつ、裕太には理解できない。

 ここが地下だけど、地上?

何だか頭が、こんがらがってきた…


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