第282話 奇妙な館
前を行くジュンペイの後ろ姿は、まったく迷いもなく、むしろ
堂々としている。
そんなジュンペイに、幾分戸惑いながらも、裕太はついて行く。
地下にもぐって行く、というイメージだったのだけれど、
見た目よりも奥行きがありそうだ。
「気をつけろよ!
ここから階段が急になって、狭くなるからな!」
再びジュンペイの声がかかる。
方向感覚が、何だかおかしくなりそうだ。
一瞬、ここがどこだか、わからなくなってくる。
この暗い闇の中で、懐中電灯だけが頼りだ。
薄ボンヤリと石段だけが、影と一緒に浮き出ている。
それを見ていると…
あぁ、やっぱりここは、トオなんだ。
まさか自分は…トオの下の階に向かって、歩いているのか?
そう奇妙に思うのだけれども…
「違うよ!ここは、巨人の家の中なんだよ」
ジュンペイが澄ました声で、そう言っても…
やっぱり裕太の頭の中が、こんがらがって、わけがわからなくなる。
どれだけ広いんだ?
どのくらいの大きさなのだろう?
「ここって、巨人が使っているの?」
そう言ってはみるけれど、この狭い通路を、巨人が通れるとは、
とても想像できない。
「違うんじゃないか?
巨人には、小さ過ぎるだろ?
だって、普通の人間の大きさなんだから」
ジュンペイは、あくまでも冷静だ。
そう言われてみると、確かにそうなのだ。
巨人サイズだったら、こんな石段…もっと大きくなるはずだ。
でも、どういうことだ?
チラリと、サキアの顏が、頭に浮かぶ。
あの…自由自在に、トオの内部を行き来する人ならば、何かを
知っているのだろうか?
ふと、裕太はそう思うのだった。
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