第283話 トンネルの向こうには…

 石段がなくなり、再び通路に入る。

今度はポツリポツリと、足元に光が見える。

非常用の通路なのだろうか?

「まるで、非常口みたい」

同じことを、ジュンペイがボソッと言う。

正規のルートではないのだろうか?

よく映画館で見かける、あの灯りのようだ。

裕太がその灯りを見ていると、

「飛行機の誘導するヤツみたいだ!」

今度は、まったく違うことを、ジュンペイが言う。

(あれっ?そっち?)

同じものを見ているのになぁ~

思わず裕太は

「そうだね」と言って、苦笑いをするけれど。

だけど、裕太はまだ、空港に行ったことがないのだ。

ジュンペイは、あるのだろうか?

何だかとても、意外な気がする。

でも、ドローンが好きなのだから、きっと動くものに

興味があるのかもしれない。


「あっ、こっち」

 細い通路を曲がると、今度は上の階にあるような、大きな廊下に

行き当たる。

「えっ、ここって…」

思わず裕太は、キョロキョロとする。

 周りが明るくなってきたので、裕太は懐中電灯を消した。

「さぁ~着いたぞ」

 ジュンペイが、ピョンと階段を飛び降りる。

「ここからは、実はボクも、知らないんだ」

まるで秘密を打ち明けるように、ニヤッと笑って、裕太を見る。

「そりゃあ、そうだろ?

 ボクだって…ここは、初めてなんだもん!」

「そうだよな」

 とにかく、ここからは未知の場所ということか。

(ま、今までも、裕太にとっては、すべて未知ではあったけれど)

さぁ、何があるのか、わかんないゾォ~

裕太はキュッと、顏を引きしめた。

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