第104話 おいでませ、地下の世界へ!

 マリさんの家は、とてもコンパクトだ。

部屋といっても、1つしかない。

今いる、暖炉のある居間と、(ソファーベッドがついている)

あとは、小さな流しとコンロのついたキッチンだけ…

スタスタと歩く彼女の姿を、サキアは優しいまなざしで見守る。

「で、何か知りたいことでもある?」

裕太とジュンペイの方を向くと、いきなり聞いて来た。

「えっ」

聞きたいこと?

わかんないことだらけだよぉ~

裕太はそう思う。

だがジュンペイは、さほど気にならないようだ。

さっきから、部屋の中を珍しそうに、キョロキョロと見て回っている。

(のん気だよなぁ)

マイペースなジュンペイのことを、裕太はちょっとうらやましいと

思う。

「じゃあ、ミナトさんたちも、みんなここの住人?」

何て聞けばいいのか、わからないけれど、とりあえず聞いてみる。

「そうよ、みんな…ここの人たちを、支えてくれるボランティアの

 人たちよ。 

 少しでも、ここの暮らしが快適になるように…サポートしてくれて

 いるわ」

にこやかに、サキアが言う。


そうなんだぁ~

てっきり地下の組織の親玉かと、思っていた…

裕太は目を丸くする。

「なら、サキアさんは?」

そう聞くと、なぜだかピタリと彼女は口を閉ざす。

(どうして?

 それって、聞いてはマズイこと?)

気まずく感じていると、サキアは意味あり気に笑い、

「それは…いずれ、わかるわ」

何となく、はぐらかされた。

「じゃあ、モトモトは…マリさんたちの家だった、ということ?」

しかたなく、話題を変えると、

「うーん、正確にはそうじゃないけど…平和な村だったのよ」

マリさんは、ヤカンに水を入れると火にかける。

裕太はあれ、と思い

「水って、きてるんだねぇ。

 水道って…どこから引いているの?」

 ここは、地下だ。

 ここまで水道が、来ているのか?

不思議に思い、裕太が聞くと

「水はね、湧き水を利用しているのよ、

 この上から…きれいな水が、湧く泉があるの。 

 電気はね、自家発電よ!」

得意そうに言う。

「へぇ~そうだったんだぁ」

さすがにサキアも、これは知らなかったようで、驚いた顔を

する。

「そうよぉ~若い人たちがね、中々やるのよ!」

我がことのように、マリさんは自慢気に胸を張ってみせた。

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