第105話 がんばる地下の人たち

 棚からカップを取り出すと、マリさんはこちらの方を見て、

「そうよ!

 地上の人たちは知らないだろうけど、ここって思いの外、

 何でもそろっているのよ!」

チラリとサキアの方を見ると、まるで自分の手柄のように、

自慢気に話した。

「ガスはね、天然のガス!

 実はこの近くに、メタンガスの湧く場所があるの。

 それをね、ミナトたちが使えるように精製して、それを

 利用しているのよ」

「へぇ~」

裕太は目を丸くした。

「メタンって、ドブなんかで、ゴボゴボ泡が出ているやつでしょ?

 そんなの、使い道があるの?」

今まではただ、スルーしていたけれど。

「私もよくわからないけれど…バイオガスとか、そういうものらしい

 わよ」

マリさんは、まっすぐにサキアの方を向いて言う。


やっぱり、よくわかんないやぁ~

でも、地下の人たちが、快適に暮らせるのなら、いいことなんだろう

なぁ~

そう、裕太は思っていた。

 地下の暮らしって、地上よりも、かなり不便なんだろう…

そう、ボンヤリと思っていたからだ。

「だから、もし爆発が起きても、キチンと対処できるように、

 マニュアルがあるから、大丈夫なのよ」

マリさんが力を込めて説明するので、そんなにうまくいくもの

なのだろうか…と、裕太は疑問に思っていた。


「じゃあ…電気は?」

 さっきまで、ベッドの下をのぞき込んでいたジュンペイが、

クルッとこちらを振り向く。

(なんだ、聞いていたのか)

この部屋に置いてあるのは、ランプだ。

自家発電…とさっき言っていたけれど、コンセントはどこに

あるのだろう?

フフフ…

マリさんが笑うと、

「さぁ、どこにあるでしょう~」

楽しそうに言う。

「もちろん、電気は通っているわよ。 

 自家発電だけどね。

 だって…冷蔵庫が使えないと、困るでしょ?」

 てっきり、地下の氷室とか、涼しい所に置いている…と

裕太は勝手に思い込んでいたので、

「そうなんだぁ~」

妙に納得をする。

「でも、ランプが!」

ジュンペイが、暖炉の上に置いてあるランプを指差す。

「あぁ、あれ?

 あれは、インテリアみたいなものよ。

 私…あんまりまぶしいのが、苦手なのよ」

何しろ、モグラみたいな生活をしてるでしょ、と目をシパシパ

させた。

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