第106話 変化に飲み込まれるトオのある街
少し薄暗くはあるけれど、それでもこれくらいの明るさで
十分かもしれない。
「電気はね、自家発電なの。
実はね、トオのある部分に、ソーラーパネルを取り付けて
いるのよ」
マリさんは、いたずらっぽい顔をして、目をクルリと回す。
「えっ、ソーラーパネル?」
そんなもの、この世界にもあるのか?
一体、どこに?
裕太は、想定外の答えに、ひどく驚いた。
てっきり…石油とか、水力とか、火力とか、風力とかで、
発電しているのだろう…と思っていたからだ。
まさか、そんな風にしているなんて…
ここも思ったよりも、技術が進んでいるんだなぁと、裕太は
感心していた。
「ソーラーパネルがついているからねぇ。
それでおこした電気は、地下のタンクに溜めるようにして
使っているの」
「へぇ~」
ジュンペイも、目を真ん丸にして聞いている。
「トオが光り輝いて見えるのは…特殊な素材のせいもあるけれど、
パネルが光に反射して、光って見えるのかもしれないわ」
「へぇ~」
そんなこと、考えたこともなかった…
裕太は尊敬のまなざしで、マリさんを見つめる。
「もとは平和だったこの村も…
政府に買い上げられて、研究施設がたった、と言ったでしょ?
そうするとね、ドンドン人が入って来るにつれて、
ドンドン開発が進んで、私たち、もともとの住人の住んでいた
場所にまで、進出してきたの。
ドンドンドンドン追いやられて…
そうして、私たちは 地下に住むようになった。
そうしたら今度は、街が出来て、宿屋や酒場や武器の店まで
出来て、人の流れが出来たら…
歓楽街まで出来た。
静かだったこの町も、すっかり面変わりして、まったく別ものに
なったのよ」
マリさんは、とても寂しそうな顔をした。
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