第107話 サキアさんって、ナニモノ?

 マリさんは、とても寂しそうな顔をした。

「だからといって、私たちはクーデターを起こしたり、

 今のトオを壊そうとか、攻めるつもりはないわ。

 確かに町が潤うのは、いいことだし…

 発展することも、悪いことではないわ。

 みんなが豊かで、幸せな暮らしが出来れば、それでいいの。

 でも…」

何かを考えるような、遠い目をする。

そんなマリさんの顔を見ると、サキアは軽くうなづいた。

「人間を人間と思わずに、実験動物として扱うようになる

 のなら、それは話は別だわ」

ピリッとした声音で、サキアは険しい顔をして続ける。

(サキアさんって…政府側の人間じゃあないの?)

あんまり、よくわからないけれど…

ジュンペイは、ふとあの陽気なミナトたちのことを、

思い出していた。


「じゃあ…あの人たちは、どうなるの?」

「あの人たちって?」

「ほら!ミナトさんたちだよ!」

 責めるように言う裕太を見て、サキアはマリさんと

目を見合わせた。

「そうねぇ~」

少し考えたあと、

「あの子たちは、自警団とでも言うのかしらねぇ」

サキアは裕太たちを見て、微笑む。

「最近よく、私たち、地下の住人をさらって、お金

 目当てに、研究施設に送り込む輩がいるのよ。

 その連中から守るために、あの子たちは自主的に、

 見回りを始めたのよ」

「へぇ~」


 ただの集団と思っていた。

だから、裕太はそんなこととは、知らなかったのだ。

裕太は助けてもらった立場だけど…

あの気さくなお兄さんのような人柄に、心を惹かれていた。

自分だったら、どうするだろうか?

きっと、見て見ぬふりをするのだろう。

頼まれたって、したがらない人が多いだろうに…

自分から進んでするなんて、出来ないことだろうなぁと、

裕太は感心していた。

「あっ、そうかぁ」

ポンと、ジュンペイは手をたたく。

「マリさんも、その一員なの?」

「えっ」

いきなり何を言い出すのだ、とマリさんはケラケラと笑う。

「私はオバサンだし…あの子たちのように、身軽に動け

 ないから…あそこまでは、ムリよ」

「なぁんだ」

ちょっとカッコイイ、と思っていた裕太は、マリさんの答えに

ちょっぴりガッカリした…

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