第89話 サイコパスの末路?

「あっ、危ない!」

 マリさんの背後に気付くと、裕太が鋭い声で叫ぶ。

だがこの人も、ただ者ではない。

信じられないくらいに敏捷に、クルリと振り向くと、

腕をぐぃっと突き出した。

ドン!

大きな衝撃音がすると、周りの壁が、パラパラと崩れる音がする。

みんながそれに気を取られている間に、まるで飛び込むようにして、

ドクターが跳ねるのが見えた。

「悪いが、ここで捕まるわけには、いかないのでね!」

お先!

そうひと声叫ぶと、ドクターは奥の檻のある部屋に駆け込む。

動物の吠える声が聞こえる。

「待て!」

ミナトがあわてて、その後を追いかけようとするも、

再び白い壁がカチリと音をたてて、今度はグングンと迫ってきた。


「あっ!」

 このままだと、逃げられてしまう!

消えた後ろ姿を追いかけて、ミナトは走り出すけれど…

まるでジグソーパズルのように、次々と変幻自在に、

白い壁が動き、奥の方から…

「ギャアアアアア…!」

男の咆哮が、響き渡った。


「なに?」

 思わず裕太は、ジュンペイと目を見合わせる。

「まさか?」

「いや、あのドクターに限って!」

互いの顔を見合せて、想像したことが同じ…とわかると、絶句する。

「嘘だろ?」

思い切って、声のした方に走り出すと…

白い壁にベッタリと…

赤い血しぶきと、飛び散った肉片がへばりついていた。


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