第88話 待たせたね、裕太!

 いつの間にか、この広い部屋には迷彩柄を着た、

若い4人の男女とジュンペイとマリさんと、

翼のあるショーンと、竜のファルコンが、檻の周りを

取り囲んでいた。

さらには少し遅れて、サキアとボディーガードたちが、

バタンと勢いよく飛び込んできた。


「サ、サキア…お前まで…」

さらにドクターは、どす黒い顔色になる。

「おまえたち…こんなことをしても、いいと思っているのか?」

それでも彼は、怒鳴るようにして、彼らに向かって声を放つ。

「今度のミーティングで、あなたの行き過ぎた研究について、

 議題にしましょうか?」

サキアは腕組みをして、ズイッとドクターに歩み寄る。

「もし、そんなことをしたら…

 この研究室の処遇は、どうなるのでしょうね?」

 研究者は何も…あなただけではないのですよぉ~

むしろ楽しそうに、サキアは大またで近付いて行く。

「ワシを脅すのか?」

 先ほどとは打って変わって、焦った様子で、落ち着きなく

目をキョトキョトさせている。

「いいえ、脅しているわけでは、ありません」

チラリと後ろを振り向くと、サキアは全く動じることなく、

ドクターにまっすぐに視線を向けた。


 2人がにらみ合っている間…

マリさんが、裕太の檻に近付くと

「ちょっと檻から、手を放して」

そうささやくと、ジュンペイもじぃっと裕太を見ている。

裕太が手をどけると、マリさんは柵に手をかけて、軽く

目をつむる。

 すると…静電気なのか、微小な電流が流れているように、

薄く白い光が走ったかと思うと…

ジワジワと檻全体が、光に包まれていた。

カシャンと音がすると、

「うわっ!」

裕太が思わず、声を上げる。

「ねぇ、オバサン…どうやったの?」

裕太が目を丸くして、声を放つのを見て、ジュンペイはククク

と笑った。

「スゴイだろ?

 このマリさんはね、何でも開けるんだぜ!」

まるで自分のことのように、自慢気にそう言った。

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