第34話  のんきな子供たち!

「お待ちしておりました」

 サキアからのひと言があったおかげか、ホテルにはスムーズに

入ることが出来た。

チェックインをしようとすると、

「サキア様から、ご伝言を預かっております」

フロントの男性が、ボディーガードに向かって、話しかける。

(伝言?なんだろう?)

不思議に思いつつ、黙って受け取る。


 通されたのは、先日とはまた別の部屋。

3人が泊まっても、十分なくらいの広い部屋だった。

「うわぁ~、すごい!」

開いたドアから、中をのぞくと、いち早くジュンペイが駆け出す。

「うちの家よりも、でっかいかも!」

早速見えていた大きなベッドに、勢いよくダイブする。

「ひゃ~!」

靴をポンポンと脱ぎ捨てて、布団の上でジャンプする。

(やれやれ)

ボディーガードは、肩をすくめるけれど、先ほどのサキアからの

伝言の内容が、気にかかっていた。


「夕食は、どうする?」

 もはや普通の小学生に戻り、楽しそうにベッドではしゃいでいる。

「おーい、裕太も来いよぉ!」

ボディーガードを無視して、跳ねている。

「どうする?」

辛抱強く、ミスターが声をかけると、チラリと見て

「まかせるよ!」と声を弾ませる。

「何か買って来てよ」

裕太も機嫌よく、彼に向かって頭を下げるので、

(やれやれ)

再び肩をすくめると、

「わかった!

 おとなしく、ここで待っていろよ」

子供たちに向かって、話しかけた。

 だが…そんな彼の言うことも、まともに聞いている様子もなく、

ヒャーヒャー言いながら、ジャンプしている。

「はいはい」

「わかった、わかった」

「じゃあね!」

元気のよい声で、一応返事をするので…

もう一度その様子を確かめると、彼はすぐに鍵を持って、部屋を

後にした。


「ねぇ、ミスターはもう行った?」

ジュンペイはコソッと、裕太にささやく。

「うん、鍵の音がした」

「そうか」

まるで内緒話をするように…

ジュンペイはこそこそと話すと、ドアの方をチラッと見る。

「お腹が空いたねぇ」

確かめるように、裕太の方を見ると…

早速部屋の中を、物色し始めた。

「何か、いいものないかなぁ?」


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