第109話 それは夢?それとも現実?

 その夜、裕太はとても不思議な夢を見た。

穴の上の方から、突然人が瞬間移動のようにして、

こちらに降ってくるのだ。

しかもその人は、竜の背中に乗っている。

(えっ、竜?

 もしかして…ファルコン?)

ストンとその背から、滑り降りた後、バサバサと

翼を羽ばたかせて、ショーンが彼らの側を飛んでいるのが

見えた。

(あれって、まさか…ボクとジュンペイ?)

なんでだ?

ボクたちは、ここにいる…というのに。

「おーい!」

思わず手を振ると、フワリと目の前が揺れて見えた。


(これって、一体、何だったんだ?)

 裕太は夢の中で、確かにその人たちの顔を見た、と思った。

しかもその顔が…まぎれもなく自分たちだった。

 裕太が不思議な夢を見ている間…

ジュンペイは落ち着きなく、かなり遅くまで、ソワソワと

していた。

「ヤッホー」

裕太を起こそうと、身体を揺らしてみたり、

家の中を、うろうろと歩き回ってみたり…

ベッドの下をのぞき込んだり…

しまいには、

「いいから、早く寝なさい!」

ガツンとサキアから、雷が落とされた。


 かなり遅くまで、ジュンペイははしゃいでいた、というのに…

一体、どうなっているのか?

まだ夜が明けきらないうちから、待ちきれないように、ジュンペイは

ピョンと飛び起きると、ニヤニヤしながら、朝食を作るという、

マリさんの後をついて回る。

金魚のフンのように、ちょこちょこついて回るので

「あらあら、眠れなかったの?」

邪険にしたりしないで、マリさんが笑う。

「だって、もったいないだろ?

 せっかく、こんな珍しい所にいるというのに!」

寝て居られるわけが、ないじゃないかぁ~

ジュンペイは、ニカッと歯を見せて

「ね、次は何をするの?」と楽しそうに聞いた。

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