第24話 迷走する子供たち
「なら…せんべい」
先ほどから、言っても『ない』…の繰り返しで、ややイラついて
きた男性だ。
「すみません、品切れです」
するとやはり、にべもなく、ジュンペイが言い返す。
「おい!」
あまりのジラしように、男はついに、カチンときた。
(ガマンした方だと思う…)
ムッとした顔で、ジュンペイをにらみつけている。
「おまえ、売る気がないんだろ?
大人をからかって、遊ぶもんじゃない!」
やや強めな声で言う。
「からかってないよ、オジサン」
だがジュンペイは、いたって平然とした顔で、男の顔を
にぃっと見上げる。
(ひぇ~)
裕太はハラハラして、見守っている。
「おっ」
そのピュアな瞳に、男は一瞬たじろぐ。
「なら…何があるんだ?」
「アメがあります」
「あめぇ?」
「はい、アメです。
棒つきと、ペロペロキャンディーと、のど飴、
中にシロップのあるやつと、キシリトール入り」
そう言って、ゴソゴソし出す。
「ね、オジサン、どれがいい?」
まるで子犬のような目で、男を見つめた。
(はぁ?)
これには裕太も、驚いた。
いつの間に、アメを?
(どこで仕入れたんだ?てか…ボクにも、くれよ)
ボクは知らない…
平気な顔をして、堂々としているジュンペイを見る。
なぜか威張ったような態度で、ジュンペイは男に対しているので…
まぁ、いっかぁ~
ジュンペイらしいやぁ。
あえて、止めるのをやめた。
(それにしても、すごい度胸だ)
男性は、ジュンペイの勢いにのまれ、
「あ、じゃあ~ミントキャンディーで」
逆に小銭を差し出す。
「はい!ペロペロキャンディーは、1本オマケしとくね!」
「おっ、おぉ」
毎度あり!
ペコリと頭を下げるジュンペイから、背を向けると、袋を破り、
棒付きキャンディーを口にくわえて、その場を立ち去った。
「おい、まるで押し売りだなぁ」
呆れた顔で、裕太はジュンペイに近付いた。
「それ…どうしたの?」
「それって?」
何のことだ、と涼しい顔をして、ジュンペイは裕太を見る。
「それだよ!」
先程強引に売りつけていた、キャンディーの入った布袋を指差す。
「あぁ、これ?」
ニッとして、ジュンペイは裕太に袋を振ってみせる。
「これ、武器屋のオジサンがね、さっきくれたんだよ」
「えっ、そんなのあった?」
得意気に胸を張るジュンペイを、呆れたように見ると
「うん!」
褒められたと思ったのか、とても嬉しそうにうなづく。
そうして布袋から、山盛りのキャンディーをチラリと見せる。
するといきなり、カツカツカツ…
肩をいからせて、サキアが戻ってみた。
「待たせたな、行くぞ」
しゃがみ込む裕太とジュンペイに、声をかけた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます