第92話 この人にその過去あり、知られざる過去…
サキアはじぃっと、潤んだ瞳を向けると
「無事で、よかった…」
本当に…と、マリさんにささやいた。
たくましい女性に見えていた、その背中も…
1人の若い女性に変わっていた。
感動の再会を果たす2人のことを、遠巻きで見つめながら、
他の仲間たちは、この奇遇に驚いている。
何しろ2人は、普段から自分の過去を話さないから、
誰一人として、その事実を知らなかったのだ。
「マリさんはね、幼い子供を亡くしてから、ずぅっと一人で
戦っていたのよ」
微笑みながら、サキアはみんなを振り向く。
「あの人はね、私だけでなく、色んな孤児を引き取っていたの。
私も手伝わせてもらってたわ。
もしも、マリさんがいなかったら…
私は今頃、どうしていたのか、わからないわ」
しみじみと言うサキアの顔を、マリさんはじぃっと見つめる。
「私はそんな、ご立派な人じゃあないわよ」
笑いながらそう言う。
「いえ、そんなことはないです」
なぜかミアが、キッパリと言い切った。
「サキアはね、こう見えて…人一倍努力家で、頑張り屋さんなのよ」
マリさんが言うのを、
「やめてよ、恥ずかしい」
まるで子供に返ったように、サキアは顔を赤くする。
「私ね、考えていることがあるの」
実のところ、彼女はとても義理堅いところもあるのだ。
ここは何とか、恩返しをしたい…
サキアはひそかに、そう考えていた。
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