第276話 究極の暇つぶし

「暇つぶし?

 そんなことをするのが、目的じゃないだろ?

 暖炉って、どこだよ」

 調子に乗って、アスレチックごっこをしているジュンペイに、

裕太は詰め寄る。

どうも、調子が狂う。

渋い顔をしていると、ニコニコしながらジュンペイが近寄って来て、

「まぁ、そう固いことを言うなよぉ」

ブスッとしている裕太の肩を、ポンポンとさわり、ジュンペイは

ヘラヘラしている。

それでもまだ、遊び足りないのか、今度は机の上によじ登ろうと、

手を思いっきり伸ばす。

それを冷ややかに見て、奥の手を使う。

「あっ、そう!

 ジャックに先に越されても、いいんだな?」

相変わらずマイペースなジュンペイに、裕太はやや硬い表情で言った。

「えっ、それは困る!」

 初めてジュンペイが、焦った声を出す。

「だって、そうだろ?

 こんな所で時間を食ったら、いずれはジャックに追い越されてしまう

 だろうなぁ」

半ば脅し文句のように、決めゼリフを素知らぬ顔で言うと…

「わかった、わかったってばぁ」

ようやくジュンペイが、遊ぶのをやめた。

 そうしてまっすぐに、部屋の真ん中を突っ切って行く。

「暖炉は、部屋の突き当りだ」

まるで何事もなかったかのように、澄ました顔で裕太を見た。

 

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