第341話 中にいたのは…

 中は思ったよりも明るくて、そしてカラフルな色で

あふれていた。

窓は、氷砂糖。

窓枠は、細いグミ。

カマドも、絵本の通りちゃんとある。

もっとも、実際に使えるのかは、不明だ。

ウェハースの床や、ビスケットの椅子。

ホワイトチョコレートの壁を、ジュンペイがほじくるように

して、食べている。


「おやおや、あなたたち…

 人の家を、勝手に食べてもいい、と思っているの?」

 いきなりとがめる声がする。

(言わんこっちゃない~)

裕太は振り向く。

ジュンペイは、まだ口をモグモグさせながら、ピタリとその手を止めた。

(まさか…魔法使いか?)

絵本では、ヘンゼルを太らせて、食べようとした魔女がいたけど…

裕太はポケットにある、犬笛を握り締める。

あはははは…

 いきなり黒い影が、こちらに近付いて来る。

「私の顏…忘れたの?」

その魔女は、真っ黒な帽子で半分顔を隠して、裕太に向かい、

にぃっと笑った。


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