第82話  囚われた少年…

 まるで動物園のような檻に、閉じ込められた裕太は…

何とかそこから出ようと、悪戦苦闘していた。

檻のすき間から、手足を出して、鍵を開けようと試みてみたり、

抜けられる穴がないかと、探ってみたり、

檻の天井部分に、何とかよじ登ってみようとがんばってみたりした。

だが、一寸の狂いどころか、ゆるみもなく、完璧に作られているため、

その企みは粉塵と帰した。

 檻をガタガタと揺らして、何とか開けようと頑張るも…

「無駄なことだ。

 あきらめるんだな」

再び天井から、声が聞こえてきた。

それから…何処からか、ガラガラと何かを引っ張る音がする。


(もしかして、誰か来た?)

こうなったら、泣き落としだろうが、脅しだろうが、

格好などかまってはいられるもんか!

何でもいい、ここから出してもらおう…

裕太はそう心に決める。

「ねぇ、逃げ出したりしないから、この檻から出してもらえませんか?」

一体相手が何者なのか、

ドクター自体が、どんな人なのかわからないので、精一杯無邪気な

子供のふりをする。

何とかその人の、良心に訴えよう…と考える。

出来るだけ下出に出て、哀れっぽく、媚びるようにしたら…

もしかしたら、同情してくれるかもしれない、と思ったのだが。

どうやらその作戦も、通用しない相手のようだ。


「さぁ~これからキミを、どうしようかなぁ」

 声の主は、むしろ楽しんでいるようにも聞こえる。

(ゲッ!やっぱり…ダメかぁ)

すっかりガッカリとすると、またガタガタと檻を揺すった。

「まるで、チンパンジーだなぁ」

へっへっへっ…

裕太の様子を、監視カメラで見ているのか、ドクターが気味の悪い

声で笑う…

その合間にも、無人の運搬機が、新たな檻を、裕太の近くまで

運び込んでいるのが見えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る