第338話 私をお食べ

 なんだって?

スティック状のそれは…赤と白のシマシマ模様で、どう見ても

棒のキャンディーのようだ。

「何って…キャンディー?」

そんなバカなと思うけれど、裕太がうかがうように見ると、

ショーンは笑ってみせる。

そうだよなぁ~

どう見ても、これはキャンディーだよなぁ~

裕太は珍しそうに、キャンディーで出来たフェンスや、チョコで

出来た門柱をさわって確かめる。

(匂いも、間違いない、お菓子だ!)


「そんなに気になるなら、中に入ってみればいいじゃん!」

あっけらかんと、ジュンペイが言う。

あくまでも、単純明快な答えだ。

「そうかぁ?でも…」

今までの経験上、こういう所は、また何かありそうな気がする。

「これって、あれだろ?お菓子の家!」

キッパリとジュンペイが宣言すると、

「どれどれ?」

早速マーブルチョコで出来た呼び鈴を、なんのためらいもなく押す。

「おい、ちょっとぉ」

お菓子の家の話を思い返す。

(これって、ヤバイんじゃあないのか?)

 だが…呼び鈴が鳴っているのかどうか…

返事がしてこない。

「誰もいないんじゃないの?」

唄うように言うと、ジュンペイはさっさと玄関に入ろうと試みる。


 もしかして…本当に、ただのお菓子の家なのか?

オーナーの好みとか?

アートとか?

アトラクションとか?

エキシビジョンとか?

(アリが群がりそうだなぁ)

 そもそも、巨人の家があるくらいだから、お菓子の家があっても、

何ら不思議はない。

そんなことを考えながら、裕太は門のすぐ脇にフェンスを連ねる、

その可愛らしくて、甘い匂いのする家を見上げた。

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