第193話 巨人はどこに?

(一体、ここは何なんだ?)

 ショーンに注意されて、裕太は首を引っ込める。

ここはなんだ?

巨大なツルが、かなり高い所からお城の庭にまで、

伸びているように見える。

(城?何の城?)

頭の中に、疑問符が飛び交うけれど…

側ではジュンペイが、空を見上げると

「へぇ~これって、あれだよね?

 ジャックと豆の木!」

ケラケラと笑う。

「何だよ、これ!

 アトラクション?」

遊園地みたい~などと、のん気に言う。

「確かに、それだ!」

同じように、笑ってはいられないけれど…

思わず裕太も、うなづいた。

(それなら、待てよ!

 もしかして…巨人も、いるんじゃあないのか?)

思わず辺りを、見回した。

 しかし今現在、目の前で見えているのは、お城らしき建物だ。

(ジャックと豆の木って、お城があったっけ?)

思わず裕太は、頭をかしげる。

ジュンペイは、知ってるのだろうか?

チラリと見るけれど…

豆の木に、すでに心を奪われている。

(こりゃあ、ダメだなぁ)

あっさりと、あきらめた。


「なるほど…童話の世界なのかぁ」

 別段驚く様子もなく、淡々とショーンはうなづく。

道しるべの石は、ストンと裕太の手のひらに下りてきた。

これで道案内は終了、ということなのだろう。

「で、どうする?

 このツルを上るつもりか?」

まさかと思うけど…と裕太は、ジュンペイに聞いてみる。

すると「何を今さら?」

クルリと振り返ると、

「そりゃあ、行くに決まっているだろう?

 ここまで来たんだから!」

旅はこれから。

まずは、手始めにツルに上る?

ジュンペイは、やる気満々のようで、腕をブンブン振って、

まっすぐに、空を振りあおいだ…


 童話の世界ならば、楽勝だ、と思っているのだろう。

これだけを見れば、

 何だぁ~トオって、そんなに怖い所じゃないじゃないかぁ~

ジュンペイは、そう思っているようだ。

「油断するなよ」

そんな心を読み取ったのか、すかさずショーンが、真面目な

顏をして、2人に向かって言う。

「油断?

 巨人に気をつけたら、いいんだろ?」

 わかってるよぉ~

ヘラヘラとジュンペイは笑う。

だがショーンは、険しい顔をして、

「いや、それだけじゃない」

キッパリと言い切る。

「いいか?ここはトオだ。

 童話の体裁をしていても、ここは、あの話の世界ではないんだ。

 甘く見ていると…やられるぞ!」

そう言うと、警戒するように、辺りを見回した。



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