第194話 豆の木を登ろう!

 目の前には、巨大なえんどうのツルが、巨木のように

空まで伸びている。

トオの中のはずなのに…

まるでそこは、天空へとつながる道筋のようにも見えた。

「あの向こうに…もしかして、巨人の城があるの?」

裕太がショーンに聞く。

「さぁな!おそらく、そうなんじゃないか?」

ショーンは、そう答える。

「あの石を持って行け!

 危なくなったら、石の案内に従って、帰ってくるんだぞ」

見送る体勢で、ショーンが言う。

「えっ?

 ショーンも一緒に、行かないの?」

だがショーンは、それには答えない。

「いいか、決してムチャをするなよ!

 言われた通りにするんだ。

 余計なことを…考えたりするんじゃないぞ」

先にツルにつかまっている、ジュンペイに声をかけた。


 どうして?ショーン!

ずっと一緒に行くんじゃなかったの?

ここで初めて、裕太が彼の顏を見上げる。

ショーンは頭を振ると、

「私は、君たちを見守っているが…

 あくまでも、このゲームのプレイヤーではないんだ。

 だから…参加はしない」

なぜかきっぱりとそう言う。

(えっ、何を言っているんだ?)

裕太は耳を疑う。

「なんで?

 どうして、一緒に行かないの?」

責めるように、ジュンペイが叫ぶ。

もしかして…何かあるのか?

そう思っていると…

ショーンは初めて、顏を赤らめると

「うーん、私は…高い所が苦手なんだ」

頭をかきながら、予想外のことを言った。


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