第408話 これは、ボクのだ!

「何だよぉ~魔法の呪文じゃないんだぁ」

 あからさまに、ジュンペイはガッカリとした声を出す。

「逃げるが勝ち、とも書いてあるぞ」

「何だよ、これ?」

まさか、ハズレか?

そう言い合っていると…

「ほぅ~君たちには、そう出てくるんだ」

いつの間にか、部屋の奥にいた目玉のたくさんついた男が、

こちらを向いて、近付いて来た。

「なに?どういうこと?」

えっ、みんな、一緒じゃないのか?

この人の言う意味が、よくわからない。

「なんだ、キミたち。

 この本の素晴らしさを、知らないのか?」

彼は、呆れたような声を出す。

「これは、持つ人の心を現す鏡。

 その人が、もっとも必要なことを、映し出してくれるんだ」

朗々とした声で、裕太たちに向かって話し始める。

「キミたちには…勇気の知恵を授けてくれているんだな。

 じゃあ、私が持ったら…何と書いてあるだろうねぇ」

ニヤニヤしながら、ゆっくりと、目玉の男が手を伸ばしてくる。

「キミ…その本を、私にくれたら、ここから出してあげよう」

はっきりとした口調で、二人に向かって、手を差し伸べる。

「それは、ダメだよ!」

裕太が奪い取ろうとするよりも早く、ジュンペイがしっかりと

胸に抱え込む。

「これは、ボクが拾ったんだ。

 だから、ボクのものだ!」

 さっきまで、まったく興味がなさそうだったのに、急に渡すのが

惜しくなったのか?

ジュンペイは抱え込んだまま、その場に座り込んだ。



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