第101話 サキアとマリさん!

 ミナトたちも、ライトをカバンにしまい込むと

「遅くにお邪魔して、すみません。

 すぐに、おいとま致します」

とひと言言い、遠慮がちに家の中を見回した。

「普段はね、人を家に入れない主義なの。

 でも、今日は特別よ!」

何だか機嫌良さそうにそう言うと、ガタゴトと棚の中に

手を突っ込む。

「適当に座ってて!」


 家の中には、見た目とは全く違い、とても暖かな雰囲気の

部屋だ。

決して広いわけではないけれど、時折あの風見鶏と同じ素材の

スタンドや、ライトや、棚などが並んでいる。

そんなに家具などは置いていない、シンプルな家だ。

それでも何だか、居心地のいい。

「巣ごもりみたい」

ポツンと裕太が言うと、

「可愛い」とミア。

「マリさんは…今もここに1人で?」

サキアも思わず、口を開いた。

「そうね」

そう言って振り向くと、サキアは肘掛椅子に、ストンと腰を

下ろした。

かなり使い込まれているのか、飴色に変色している。

「今は、気楽な独り暮らしよ」

にこやかに微笑む。

「あなたも、昔みたいにここに泊まったら?」

愛おしむ目をして、サキアに話しかける。

「ありがとう、そうするわ」

サキアも、これまでに見たことのないくらい、穏やかな顔で、

ゆったりと微笑んだ。


(それにしても、サキアとマリさん…

 どういう関係なんだろう?)

やはり裕太は気になる。

 お互いに、とてつもなく身軽に動くことと、とても鋭敏な

カンをしている、ということ。

他にも、他の人とは違うオーラのような者がある、という共通点は

あるものの…

まったく顔も、雰囲気も、似て非なるものだ…

親代わり、と言っていたけれど、どういうことなのだろう?

不思議に思うけれど、さすがの裕太も、それ以上は聞けないでいた。

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