第65話 君はだれ?
マリさんは、何をしているのか…
黙ったまま、何やらゴソゴソしている。
「大丈夫よ、危なくはないわ」
つとめて明るく、ジュンペイは励ますように、声をかける。
「えっ」
どうしてわかるのだ、そう思って目の前を見ると…
ようやく目が慣れてきたのか、大きな檻がデンと据えてあるのが
見えた。
薄暗がりに、キラリと光る眼玉が2つ。
(なんだろう?)
おそるおそるジュンペイは、近付いて行く。
「えっ、ヒト?」
じぃっと身じろぎ1つしない、その生物は…
まったく声を発せず、ただ黙ってこちらをうかがっているようだ。
(なに?人形?マネキン?)
あんまりにも、じぃっとしているので…
生きているのかどうかも、寝ているのかも、わからない…
手を差し出したら、噛みつかれたり、引っ張られたりしないだろうか?
だけど何で…檻の中なんかに?
疑問が膨らむ。
(まさか…あのドクターの実験の対象なのか?)
急にゾッと背筋が、寒くなった。
「どうしたの?」
ふいにマリさんの声がかかる。
我に返ると、もう1度、オリの中の人を見つめる。
まぼろしか、実は実験動物なのかもしれない、と思ったからだ。
「あっ」
マリさんも、ようやく中のヒトに気付いた。
その様子に気付くと、
「マリさんなら…どう思う?」
ジュンペイは聞く。
「あなた…大丈夫?」
怖がりもせずに、マリさんは近付く。
ポカンと魂の抜けた人形のような、濁った瞳が、急にカッと
見開くと
「お前たちは、何者だ?」
機械的に聞き返された。
まるで超音波のような響きのある声で、そのヒトは話しかける。
男性なのか、女性なのか…
わからないほどの、中世的な雰囲気がある。
(まさか、天使?)
あるわけがない、と思うけれど、よく見ると、とても整った
顔立ちをしている。
(なんで、こんな檻に?)
ジュンペイがためらっていると、
「ここに、何しに来た?」
またも鋭い声で、ジュンペイたちを見つめた。
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