第348話 飛べ、ファルコン!

「うわっ!」

 ファルコンの長い胴体に、裕太は身体を押し付けて…

両手でぐっと、ウロコの部分につかまる。

グルリと手を胴体に巻き付けようとしても、手がツルンと

すべってしまわないように…だ。

 ウロコは固く、銀色に光っている。

(剝がれたりは、しないかなぁ)

裕太はちょっと、心配をする。

ファルコンは特に、気にしている様子がないので、とにかく

振り落とされないようにと、ぐっと力を込める。


 シェーラの姿は、もう見えない。

おそらくは、目の前のトオに、飛び込んだのだろう。

ショーンは大きな翼を広げると、フワリと浮かび上がる。

(どこに行ったのか、当てがあるのだろうか?)

裕太は気になるけれど、それよりも…

自分が落っこちないようにするだけで、精一杯だった。

 ビュービューとうねるように、ファルコンは飛ぶ。

ショーンはすでに、だいぶ先の方を飛んでいるのが、

かろうじて確認出来た。

おそらく、自分を乗せているから、その分、ファルコンに負担が

かかるのだろうか?

裕太はふとそう思い、申し訳ない…と、頭を胴体に埋めた。

プン…と海の香りがかすかにしてくる。

なるべく風の抵抗を少なくしよう…と、裕太は黙って身体を

出来るだけ平らにさせて、竜の身体に身をまかせた…

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