第236話 さぁ、上るぞ!

(まさか、うまくいくなんて…)

 さすがジュンペイだな、と裕太は感心する。

「さ、ここで満足している場合じゃないぞ」

ポンとそう言うと、ジュンペイは裕太に向き直る。

「さぁ、これを上るんだ」

 階段の踊り場から垂れている、先ほど投げたロープを指差す。

(そうくるよなぁ~)

裕太は階段を見上げる。

これをよじ登るのも、至難の業だ。

だがジュンペイは、涼しい顔をして、

「このロープを伝っていけば、楽に上がれるはずだ」

やけに自信満々でそう言う。

(自分と一緒に、するなよなぁ~)

その高さに、おののくのだが…

「やっぱり、するんだよな?」

やや腰が引けて来る。

 さすがに、自分にこの高さを上れるのだろうか、と裕太は

心配になってきた。

「もしかして、ここの電気、使えるんじゃないの?」

気まずい空気をごまかすように、たまたま目に付いたスイッチに

手を伸ばした。


 パチンと一斉に、辺りが明るくなる。

「おっ、電気も大丈夫みたいだな」

「ついでに、エレベーターもあればいいのになぁ」

裕太は早くも、弱音をもらしてしまう…

 何度見上げても、かなり険しい階段だ。

(これを、上るのか?)

落ちたら、ケガだけではすまないだろう…

「これって、どのくらいの高さなんだろう?」

まだ踏ん切りがつかず、裕太はグズグズしている。

「どれくらいって、2階だろ?」

どうやらジュンペイには、質問の意味が伝わらなかったらしい。

「だから…学校でいうと、3階とか4階とか?」

裕太は自分のいた学校を、思い浮かべる。

「うーん、そうだなぁ」

ジュンペイは、少し頭をかしげると、

「たぶん…学校の屋上くらい、あるんじゃないの?」

やけにあっけらかんと、そう言った。

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